(財)日本水産油脂協会

   
 マイワシ、サンマ資源
 水産研究所・広島大等講演
 

 
 財団法人日本水産油脂協会(東京都渋谷区・平田芳明理事長)は去る8月22日に、渋谷区渋谷の「アイビーホール青学会館」において、毎夏恒例となっている平成26年度水産油脂資源講演会を開催した。
 当日は、独立行政法人水産総合研究センター中央水産研究所経営経済研究センター漁業管理グループの金子貴臣研究員が「資源の増減が地域経済に与える影響の評価法—釧路市におけるマイワシを事例に—」をテーマに、独立行政法人水産総合研究センター東北区水産研究所資源海洋部・浮魚・いか資源グループの巣山哲主任研究員が「近年におけるサンマの分布の変化と資源の動向について」をテーマに、広島大学大学院生物圏科学研究科・生物資源科学専攻・食料資源経済講座の山尾政博教授が「東南アジアの水産事情ー日本との水産物貿易の視点から—」をテーマに、それぞれ講演を行った。
 それぞれの講師の講演内容の概要(要旨)は次の通り。
▽金子貴臣氏の講演
一、 我が国の水産業の特徴として、多様な水産加工業が存在し、地域経済と水産業とが密接に結びついていると云う点が挙げられる。このため、何らかの漁業管理施策が導入された時には、水産加工原料の質的および 的変化を じて、地域経済にも影響が生じる可能性が高い。一方、米国においては、水産資源の管理は公共信託理論に基づき政府の責任で実施されており、資源管理が地域社会に影響を与える可能性についても、政府に説明責任が伴う。例えば、マグナソン・スティーブンス法は、漁業管理計画に「漁業影響報告書」を含むよう求めており、新たな漁業管理計画が作成される際には、漁業者や漁業コミュニティに対する社会経済的な影響が評価されている。我が国おいてもTAC制度を初め政府主導の資源管理方策の導入が浸透しつつある。
一、 1990年の釧路市産業連関表をベースに、水産食品部門を「フィッシュミール産業」と「それ以外の水産食品」、漁業部門を「まき網漁業」と「それ以外の漁業」に分割して分析用の産業連関表を作成した。また、釧路港で水揚げされたマイワシが、全 フィッシュミール産業に販売されたと仮定して、フィッシュミール製造業の他地域への移出額の減少を、マイワシの水揚げの減少として、読み替える事により、マイワシの減少が地域経済に与えた影響を分析した。
一、 産業連関分析の結 、90年から93年までの2年間の間に、マイワシの急速な減少による地域経済への影響は、全体でおよそ113億円と推定され、339人の雇用に対し影響があったと推定された。特に経済的影響としてフィッシュミール産業に対する直接的な効 が大きかった。フィッシュミール産業は装置産業であることから、生産額に及ぼした影響と比較して、雇用に与える影響はあまり大きくなかった。 
▽巣山哲氏の講演
一、 サンマは日本沿岸から北アメリカの沿岸まで北太平洋に広い海域に分布している。産卵期はおもに9月〜翌年の6月頃までで、寿命は2年である。日本ではおもに棒受網で漁獲され、漁期は8月から12月までである。解禁直後の漁場は千島列島の周辺から北海道道東沖にできるが、季節の進行とともに漁場は南下し、三陸沖、常磐・房総沖へと移動する。
一、 サンマは日本のほか、ロシア、韓国、台湾が漁獲を行っている。1990年頃までは主に日本とロシアが漁獲していたが、その後韓国と台湾の漁獲 が増加し始め、2000年代からは台湾の漁獲 が急増している。日本とロシアは主にEEZ内の近海で8月以降に漁獲しているのに対し、台湾と韓国は5月頃から公海上で漁獲を行っている。世界の漁獲 に対する日本の漁獲 の割合は2010年には50%を切り、2013年には台湾の漁獲 が初めて日本の漁獲 を上回り、日本の漁獲 の割合は36・5%でまで低下した。
▽山尾政博氏の講演 
一、 日本の食料問題の視点は、自給率だけが問題なのか。日本の農業・水産業がもつ利用可能資源 、「資源利用率」が問題にされるべきではないか。国際分業と貿易関係があって、食料が供給されていると云う実態についての認識が不足している。食料生産・流 ・加工が、国境を超えて機能していると云う実態を踏まえた、食の安全確保に関する政策が求められている。
一、 東南アジアには、多数の大規模な食品製造企業が立地している。世界の食料生産基地として存在感を増し、資本と技術の集積が大きな経済効 を発揮している。HACCP(食品の衛生管理法)、GMP(Good Managemento practice)、GAP(Good Aquaculture practice)、MSC(持続可能な漁業と認証された漁業)、IUU(違法、無報告、無規制)などを取り入れる動きがある。
一、 タイでは養殖GAPが進んでいる。1997年に「責任ある養殖業」(CoC)を策定したが、当時はガイドラインのとして性格が強かった。包括的な指針としては環境保護、法と制度の遵守、質と安全、効率性、社会的責任、教育、訓練、地域の参加、ゾーニングで水産局がイニシアティブをとってGAPを普及させる。