㈶日本水産油脂協会
   資 源 講 演 会
 道東沖マイワシ増大と釧路需給
 東京海洋大学の工藤氏講演
 産地処理能力低下で水揚げ困難
     
   ㈶日本水産油脂協会(東京都渋谷区・平田芳明理事長)は8月25日、東京都港区の南青山会館大会議室に於て、「平成29年度・第69回水産油脂資源講演会」を開催した。同講演会は、毎年恒例となっており、国内の漁業環境や魚油・魚粉生産動向を占う上で重要な情報源となっており、水産食品、飼料関係者が全国から多数参集した。
 今回のセミナーでは、近年資源が回復傾向にあるマイワシの資源動向と道東沖のインフラ状況。資源の今後の動向、最近話題になっている外国漁船操業の問題についての三つがテーマに挙がった。
 講演の一題目は「道東沖マイワシ資源増大にともなう釧路港における需給構造の変容・資源の持続的利用の今日的課題」について、国立大学法人東京海洋大学・海洋科学部・海洋政策文化化学科准教授の工藤貴史氏が、二題目は「マイワシ資源の動向と今後の見通し」をテーマに国立研究開発法人水産研究・教育機構・中央水産研究所資源管理研究センター資源評価グループ・グループ長の渡邊千夏子氏が、休憩を挟んだ三題目は「北西太平洋公海域における外国漁船の漁獲と浮魚資源の変動について」をテーマに、国立研究開発法人水産研究・教育機構審議役の大関芳沖氏が、それぞれ講演を行った。(渡邊、大関両氏の講演内容については続報)
 冒頭に挨拶を行った平田芳明理事長は今回セミナー開催の意義について「HPが情報発進のツールとなっているが、アクセス数も4000件を超えるまでになった。当協会のHPでも銚子港に水揚げされたマイワシの脂質調査のデータ結果を公表している。脂質量とDHA含有等も発表している。また、昨年からの道東沖のマイワシ資源量も増加しており、工藤先生には釧路港でインフラ問題を、他にも外国船絡みの資源管理の問題等を話してもらう。本日の講演会で、新しい情報や視点が得られる事を期待して挨拶としたい」と語った。
 引き続き登壇した工藤貴史准教授は、マイワシの資源動向と需給状況について「近年マイワシの資源が増加傾向になっているが、道東沖ではミール工場が大幅に減った事で、現地の処理能力が極端に低下しており、巻き網船団の生産力が最大限発揮される場 がなくなっている。これ以上資源 が増加しても水揚げ を増やす事が困難となっている。この様な環境の中で資源を持続的に利用する事を考えていきたい」と語り、国内のマイワシ漁が、1995年をピークにして、減少傾向が継続した事から、道東沖周辺のミール工場が閉鎖され、現状のインフラでは、マイワシ資源増加に対応出来ない事を示唆した。
 実際に2016年の大臣管理の国内のTAC(魚種ごとの年間漁獲可能 )最終配分は33万9,000トンで、漁獲実績は19万9,885トンと消化率は59%だった。
 このうち、道東沖の最終配分は8万2,488トンで漁獲実績は8万2,298トンと、消化率は99・8%と極めて高くなっている。
 工藤氏は初めに道東沖漁場の概要について「北部太平洋海区の道東沖は、許可統数が1968年から24船団で現在も同船団数が操業している。操業期間は6月16日〜10月31日となっている。道東沖は1995年〜2010年までの17年間マイワシの水揚げが見られなかった。1980年代は魚油・ミール向けの出荷が最盛期で、現在も漁獲量の85%が粕落ちしている。1987年には道東沖がマイワシ太平洋系群の最大漁場で120万トンの水揚げがあり、全体の40%を占めた。釧路港には1976年に10工場だったミール工場が1990年には24工場に増加し、一日の処理量も1万3,350トンに達した時期があったが現在は二工場のみ。最盛期の1987年の魚粉の売上高は129億7,000万円、魚油の売上げは24億2,000万円に達した。21社24船団で121万9,000トン、売上高126億5,000万円で、このうち83万1,000トンが釧路魚市場、釧路市漁協からトラック350台を使い、24時間体制でミール工場に搬送された。それが1990年から95年までにミール工場の閉鎖が相次いだ」と語った。
 工藤氏は最後にマイワシ資源の利用継続策について述べ「世界的な需要拡大とアンチョビー資源減少の中、魚粉製品価格は上昇傾向にある。その中で低迷していた釧路港のマイワシの産地価格もキロ当たり20円から同40円に上昇している。2014年からマイワシの水揚げが急増し、魚粉・魚油製品価格も上昇しているがミール工場の新設の動きが見られない。この中にあってマイワシ資源増加に対応した水揚げを実現するために、釧路港では市場関係者と水産加工業者が話し合い食用向けの冷凍原料への仕向けを開始した。六社が冷凍原料を扱う事になり、フィレ加工を行って回転寿司のネタなど外食産業向けに出荷される様になった。これが2014年以降のマイワシ価格上昇にも貢献している。因に2014年のマイワシ価格は、ミール仕向価格がキロ当たり38円に対して冷凍仕向価格が同80円となっている」と語り、マイワシ資源を有効利用するためには、質重視を実現するためにミール以外の凍結・保管能力などの産地能力を増強させるしかないとの結論に達した。
 



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