水産油脂協会資源講演会  
   漁獲圧維持で資源増加の可能性
  中央水産研究所 古市氏講演
 産卵量増と漁場拡大が後押しに
         
   日本水産油脂協会(東京都渋谷区、平田芳明理事長)は8月24日、東京都渋谷区のアイビーホール青学会館で「平成30年度(第70回)水産油脂資源講演会」を開催した。国内の漁業環境や魚油・魚粉生産の動向を見極めるための重要な情報収集の場、と位置付けられ、全国の水産食品・資料関係者が多数参集した。今回のセミナーでは、近年、資源が回復基調にあるマイワシとマサバの資源状況、ノルウェーの水産養殖と日本の課題、マサバの完全養殖のブランド化の成功例の三つのテーマで専門分野から三人の講師を招いて実施した。
講演する中央水産研究所の
古市生氏
 講演の一題目は「マイワシとマサバ資源状況と今後の見通し」について国立研究開発法人水産研究・教育機構 中央水産研究所資源研究センター資源評価グループ研究員の古市生氏(写真)
が、二題目は「ノルウェーにおける水産養殖の現状と日本の課題」について国立研究開発法人水産研究・教育機構開発調査センター資源管理開発調査グループグループリーダーの廣田将仁氏が、三題目は「マサバの完全養殖とブランド化」について九州大学副理事 大学院農学研究所教授の松山倫也氏が講演を行った(廣田、松山氏の講演内容については続報)。
 冒頭、平田芳明理事長は次のようにあいさつした。
「農林水産省の林芳正大臣は2013年の時点で農林水産物の輸出を1兆円と目標に掲げられた。目標額は当時の輸出額の2倍に値する。今年1〜6月までの輸出量の伸び率は15・2%、金額で4400憶円。このまま推移すると年末には8800憶円となり、来年も15%伸びると1兆円に達成する。農林水産物の中で水産物の輸出の割合は1〜6月までの累計で35%。サバとイワシが主力で、伸び率はサバが50%(金額は200憶円)、イワシが150%(同50憶円)。資源が回復基調にある魚種が輸出にも貢献。ただ、サバはサイズや脂の乗りが安定しているといわれるノルウェー産のサバが日本市場でシェアを拡大、との研究報告もあるため手放しで喜ぶわけにはいかない。世界の養殖生産 と水産物の需要は確実に伸びて、やり方次第では期待できる分野だ」
 引き続き登壇した古市生氏は、マイワシとマサバの基本的な生態を次のように説明した。
 マイワシは寿命が七歳程度で、一歳から成熟が開始され、二歳でほとんどの個体が成熟する。マサバは寿命が七~八歳程度。2歳から成熟開始で三歳でほとんどの個体が成熟する。両種とも産卵の盛期は2〜4月で、0歳魚は春に黒潮により東方へ移送し、沖合域で成長してから沿岸に回遊して漁獲対象となる「沖合加入パターン」と、沿岸域に取り込まれシラス幼魚期から漁獲対象となる「沿岸加入パターン」がある。「沖合加入パターン」は変動が大きい資源の動向を左右するが、「沿岸加入パターン」は毎年安定して存在する。
 マイワシとマサバの資源動向については「近年、マイワシ、マサバの資源 の増加は顕著な増加傾向だ。資源水産が最も低かった時期には両種とも漁場が常磐3陸南部域に限らていたが、近年は3陸北部〜道東海域まで漁場が拡大。また太平洋南部海域(和歌山県以西)にも来遊して、漁獲がある。先日、水産研究・教育機構中央研究所が行った資源評価及び漁海況予報会議ではマイワシが今後も増加傾向が続き、マサバも前年並みの好調な漁況になるとの予報が出されている」と語った。
 マイワシ(太平洋系群)については「10年に卓越年級群(誕生年が同じ資源のグループを年級群とし、ほかの年に比べて加入量が特に高い年級群を﹃卓越年級群﹄と呼ぶ。﹃加入 ﹄とは、生まれてから初期減耗・成長を経て漁獲対象となるまで達した資源の尾数)が発生し、漁獲圧も減少傾向だったことから親魚 は増加。15年には再生産成効率(加入量÷親魚 で表し、生き残りの良さの指標となる値)と増加した親魚 が相まって10年を上回る卓越年級群が発生。16〜17年級群の加入も良好で資源 は大きく増加。漁獲 は02〜10年は10万t台の低い水準で推移したが、11年以降増加、17年は42・5万tまで増加。漁場も三陸北部から道東沖まで拡大し、安定した漁場が形成。水産機構の調査でも仔稚魚の広い分布が確認され、産卵量の増加、産卵場の拡大が認められ、資源量の順調な増加が裏付けられている。18年度の資源評価は資源水準は中 、動向は増加傾向。18年級群も良好な加入が見込まれ今後も増加が期待できるという。
 マサバ(太平洋系群)は「04年以降の加入量水準の高い年級群の発生、及び漁獲圧の低下で、資源 は増加。特に13年級群は高い加入量で資源 を大きく引き上げた。資源 の増大に伴い、成長の遅れ、成熟年齢の高齢化がみられる。産卵群の太平洋南部海域への来遊が見られ、分布域も拡大。17年度の資源評価では資源水準は中位で、動向は増加傾向。13年級群以降は16年級群も13年級群に匹敵する高い加入量だと評価されている。17年〜18年級群の調査結果では良好な加入が見込まれ、今後も増加傾向が続く。両魚種とも資源は増加傾向で、親となる高齢魚も増加し、現状の漁獲圧を維持すれば資源が増加する可能性は高い」とまとめた。
 


  USSEC