水産油脂協会  
    資源講演会
 中央水産研究所の廣田氏が講演
 ノルウェーの養殖と日本の現状
         
   東京都渋谷区、平田芳明理事長は8月24日、東京都渋谷区のアイビーホール青学会館で「平成30年度(第70回)水産油脂資源講演会」を開催した。
 一題目の「マイワシとマサバ資源状況と今後の見通し」について、国立研究開発法人水産研究・教育機構中央水産研究所資源研究センター資源評価グループ研究員の古市生(しょう)氏の講演に続き、二題目は「ノルウェーにおける水産養殖の現状と日本の課題」について国立研究開発法人水産研究・教育機構 開発調査センター資源管理開発調査グループグループリーダーの廣田将仁氏が講演した。
日本水産油脂協会
 廣田氏はまず「日本の養殖業が持つ独自の経営の形を踏まえて、生産管理での課題はどのようなものか、またその修正はどのような方針や技術をもって行われるべきなのかについて述べる。ノルウェーのサーモンビジネスは合理的な輸出ビジネスのモデルとして多くの示唆を与えてくれるが、その中でも特に製品を標準化させるための生産管理方針が参考になる。日本とは経営と産業の成り立ちが異なるため日本の養殖業はノルウェーをそのまま活用することはできないが、生産管理の方針については日本の実情に沿って学ぶことができ、大切なことだ」と前置きして、ノルウェーのビジネスデザイン、また、日本における養殖業成長ための必要な技術などについて語った。
 ノルウェーの養殖サーモンビジネス成功の要因については、最初から輸出を拡大するための経営モデルを想像し、第一に目標達成の設定から基本的な方針、これに応じた経営資源の運用戦略の策定、必要となる技術要素の開発と運用が決定されていく一連の流れがあるという。この大きな目標は世界での市場シェアの数値目標を据えることから始まり、達成するため異なる国、大陸、地域に対して次々に新しい市場(消費)を作って広げていくことが大事で、その達成のためにはインテグレーションと標準化がキーワードだとした。
 そして「インテグレーションは海の中から消費までの多くの異なる事業を総合展開するもので、取引の不確実性の回避とともに規模の経済性を発揮するものだ。標準化とは、異なる国々における自然環境での生産管理上のリスクを最小限にすることと、新しい消費国でのマーケティングの不確実性を下げるための技術的なシステム化を意味する。つまりサーモンビジネスでの基本的な方針とは、経営統合と技術の標準化の両輪で地理的に次々と新しい市場を作り続けるということになる。その上で、世界各国の生産拠点の確立、広域的に製品を動かすサプライチェーン及びロジススティックスのデザイン、消費者が好む品質を供給するマェーケティングに落とし込んでいくものだ。日本の場合は、もともと国内消費産業のため、生産と物流は分業化され、国内の需要に対応することがメインとなっている。そもそも異なる国や地域に対して次々に市場を作るという目標も方針もなく、そのために統合した大企業を作るわけにはいかない。ノルウェーと日本のどちらが優れているというものではないが、今後、国内市場の拡大と海外市場も視野に入れた成長産業化を目指すのであれば、生産管理における標準化という不確実性の低下に取り組む必要がある」と廣田氏は語った。
 さらに廣田氏は「日本の養殖業を成長産業に育成していくに必要なことはITC(情報技術交流)を生産現場へ導入し育種・人工種苗することにある。ITCやAI(人口知能)を活用した効率的な漁業・養殖業の推進が取り上げられ、いくつかの事例が見られるようになった。例えば、旧餌料や回数などの生産管理情報をタブレット入力やクラウド管理することで、より生産の過程を見やすくするというものだ。生簀中の魚を可視化して体調の管理やサイズの把握などができる。こうした新技術は製品を標準化させて安定供給への第一歩として評価できる。日本最大の養殖魚種であるブリでは、夏種苗の開発などと併せて国内外の市場で新しいビジネスチャンスも広がっていくと考えられる」とまとめた。
 


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